北朝鮮の都市「恵山」を望む中国の小さな町「長白県」に日本人が1人で行ってみた(事件編)
さて、何とか大きな事件もなく無事に長白に着いたわけだが、この小さな辺境の町で実は小さな事件に2件も遭遇してしまったのだ。
2件の事件はいずれもここ、億鑫園ホテルでのできことだ。はじめの事件はまさに長白に到着したその日のこと。足早に階段を上り、上った先のフロントでのことだ。フロントには誰もいなかったが、中国語では何と言って呼びかけていいものか考えあぐねていたら奥から20代くらいの男性がやってきた。おそらくは宿の人だろうと思い、Ctripの予約確認書(中国語で印刷しておいたもの)を呈示すると、意外な返事が返ってきた。
ニーチャン「…?コレハ……ナンデスカ?」
いやいや、さすがにこれには驚いた。返事の内容もさることながら、いきなり日本語で喋りかけてきたことにまず驚いた。しかしながら今考えてみれば予約確認書には予約者氏名が記されていたため、日本語の勉強をしたことがあれば日本人ということくらい想像に難くなかったのかもしれない。
中国語で印刷した中国最大手の旅行代理店の予約確認書が通用しなかったショックのほうが遥かに大きく、その時はそんなことを考える余裕もなく、返事をすることすらままならないほどだった。ホテルの予約のことを中国語で订房ということくらい知っていたし、おそらく日本語が通じるにもかかわらず頭が真っ白になってしまい何の言葉も発せずただただ狼狽していた。
幸いにして向こうが一番上についていたCtripのロゴに気がつき理解をしてくれたが、どうやら彼は宿のスタッフではなかったらしい。「チョットマッテ」と言われたので、こぢんまりとしたロビーの椅子に腰を掛けて少し待っていると、外から別な女性がやってきた。どうやら彼女が宿のスタッフのようで、先の男性が事情を説明してくれている。念のためパスポートを呈示すると、予約確認書とパスポートを交互ににらめっこしている。いやいや事前に予約してあるんだからもう少し事前に準備しておいてくれよ…と思いながらも静かに待つ。どうやら彼女にとっても初めてのことだったらしく、先の男性と相談しつつとりあえずパスポートのコピーをとって宿代2泊分+デポジットの300元(約5,100円)を徴収したらすんなり鍵を渡してくれた。とりあえずは一安心だ。
あいにく宿の内装写真を撮り忘れてしまったため、予約サイトの投稿写真を参考にして欲しい。中国に限らず旅行予約サイトの写真はかなりの「詐欺写真」であることが往々にしてよくあるが、この宿に関してはまさに写真の通りで、日本の安宿レベル、中国の安宿であれば十分のレベルだった。
荷物を置いたら帰りのバスのきっぷを買いにバスターミナルまで軽装備で散歩。せっかくなので鴨緑江沿いを歩いてみたが、その様子は後述とさせて頂きたい。結局バスターミナルに着いたものの、すでに最終バスが出たあとということもあり入口は施錠されており、きっぷは購入できなかった。仕方がないのでそのまま引き返し、長白大飯店で夕食をとってそのまま宿に戻った。
2件目の事件は翌朝、朝飯とバスのきっぷを調達し宿へ戻ってきた後に起こった。
実はこの宿、スタッフは先に出てきた女性と(おそらく)その祖母の2名のようで、その祖母のほうに話しかけられた。何しに来た、どこから来た、中国語が喋れないのになんで一人でこんなとこまで来た、などなど、まぁ余計なお世話である。中国ではこんな感じで絡まれることが珍しくなく、列車に乗り合わせた人にも話しかけられることがよくある。なので不審に思うことは何らなかった。中国語が喋れないのになんで中国に一人で来たのかとか、そんなこと聞かれても…と返答に窮していると、階下の扉が開く音がした。直後に、複数人がドカドカと階段を上がってくる音がした。何事かと思い振り返ると、そこにいたのは3人の警官(いわゆる公安)であった。
勘の鋭い人ならもうお気づきのことかと思うが、彼らの用事は他でもなく私に対してであった。オバチャンは時間稼ぎのために話していたのだろう。しかしながら鈍感な私はその段では何のことか状況が掴めていなかった。警官3人は男2人女1人で、うち1人はカタコトの日本語が喋れたので、事情聴取は概ね日本語、ところどころ筆談で行われた。
警官「長白へは、何を目的にして来ましたか?」
私「観光です。」
警官(呆れた顔をして)「観光は朝鮮ですか?」
私「そうです。朝鮮を眺めに来ました。(面倒なことにならないように)明日このバスで帰ります。(先ほど仕入れたバスのきっぷを呈示する。)」
警官(3人で相談をして)「念のため写真を撮ります。」
私「わかりました。(日本語の喋れない警官に手渡す)」
警官「朝鮮のほうを向いて写真を撮るのは禁止です。危ないですから辺境線にはあまり近づいたりしないで。日本の城市は?」
私「大阪です。」
警官「職業は何ですか?」
私「会社員です。(通じなかったので)公司、働いてます。(紙に会社名を書く。)」
警官(首を傾げながら)「何の業務ですか?」
私(横文字の会社名では分からないのも仕方なかろうと思いつつ、業種を中文で紙に書く。)
警官「今日の予定は何ですか?」
私「う〜ん(川沿いを散歩とは言えないよなぁ…)予定は特にない、まぁその辺(川とは反対の方角を指して)を適当に散歩とか」
警官(3人で相談して結論を出したようで)「じゃあ、危ないですから辺境線にはあまり近づかないようにしてくださいね。」
私「はい、分かりました。」
以上が記憶を頼りに再現した事情聴取の一部始終だ。公安といっても武器は携帯しておらず(ピストルや警棒くらいは持っているのかもしれないが)、尋問のような張り詰めた雰囲気もなく、むしろカタコトの日本語で何とか意思疎通をはかっているという状況もありどこか和やかなムードすらあった。その後は3人で手分けして電話で本部に報告をしたり、紙に報告書をまとめたりが始まったので、念のため先の日本語が喋れる人に承諾を得て外へ出た。
冷静になって考えてみれば、彼らが私を武力で脅しながら尋問をしなければならない必要性など全く皆無なのであった。ここは幾ら辺境の地とはいっても外国人の立入が禁止されている区域ではないのだし、きちんとしたホテルに宿泊をしているわけだし、犯罪歴も当然ない。たま国境の平穏を本心から願って、忠告をしてくれているだけなのだ。というわけなので、長白には皆さん安心して訪れて頂きたいと思います。(とはいえ国境沿いで紛らわしい行為をしないなど最低限の守るべきことは守りましょう。)
※個人の感想です。責任は負いかねます。
今回の宿億鑫園ホテルの予約はこちら
(川沿編①へ続く)
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