2017年7月18日火曜日

北朝鮮の都市「恵山」を望む中国の小さな町「長白県」に日本人が1人で行ってみた(山上編)

下流の方面を歩いた後は、全州拌飯館で昼食をとりホテルに戻って一時休息。正直もう長白で見るべきものはひと通り見たという満足感があったので、このまま夜までホテルにいてもよかったのだが、それはそれでここまで来ておいて勿体無いという気持ちがあり、最後に少しだけ気になっていた場所へ行ってみることにした。


それは灵光塔(霊光塔)。長白の市内から山の上を見ると、この塔がところどころから垣間見えるのだ。市内から見えるということは、あそこに行けば市内が一望できるはず、市内が一望できるということは対岸の恵山も一望できるはず…これは絶対に行かなければならない…!とまで強い意気込みでなかったことは先述の通りだが、そういう訳で山に登ったわけだ。(画像は一部を除きクリックで拡大)
※ちなみに詳細は後述するが、この塔は霊光塔ではない。
霊光塔 地図
おおよその位置関係はご覧の通り。実線は車道、点線は歩道の意味。適宜別のタブで開くなどして位置関係を確かめながら読み進めていただければよいかと思う。なお記憶を頼りに描いているため細部が実際と異なる場合があるが、その点はご容赦いただきたい。


通江路の狗肉店
ということで、まずは登り口となる通江路へ向かう。この通江路にはやたらと「狗肉」の店が多く軒を連ねている。「羊頭狗肉」の四字熟語にもある通り狗肉とは犬肉のことだ。朝鮮族には犬肉食の文化があり、コリアタウンなどで食すことができる。もちろんここは「長白朝鮮族自治県」というだけあり朝鮮族が多いのだが、町の中でも他の場所にはほとんど見かけなかったのでとても驚いた。なので勝手に通江路を「犬肉通り」と名付けてしまったほどだ。


狗肉店だけではなくやたらと小洒落たカフェも何店かあった。逆に言えば喫茶店らしきものもこの界隈以外には見かけなかった。というか中国では喫茶店というものをあまり見たことがない気がする。


というか、この喫茶店どこかで見たことがあるような…。一時期Twitterで拡散されていた気がするが、もしかしてこれチェーン店なのか?それともこんなところまで日本人が来ていたのだろうか?


そして更に登っていくと商店の類は少なくなっていく。車道は相変わらず緩やかに上りながら右に曲がっていくが正面には急勾配の階段が立ちはだかっている。結果としてはどちらを進んでも同じ道なので脚力と相談して選べばよい。



階段を登った先もそのままだらだらと坂は続く。両隣は民家だろうか。中国らしからぬ昭和な雰囲気が漂っている。


更に進むと先ほど右へ折れた車道と合流する。直進も可能だが左折が正解、なので地図にも敢えて描いていない。間違いというわけではないのだが、地図から明らかな通り遠回りなのだ。


そのまま直進するとやや太めの車道に突き当たる。この時はやたら大規模な工事中だったが、百度地図の全景(ストリートビュー)を見ると普段はきちんと舗装された片側一車線道路のようだ。


塔山公園の門
そして交叉点を左に曲がり(先の交差点で既に左折できた場合はそのまま直進になるが)更に登っていくと大きな門がある。「塔山公園」という名前の公園になっているようだ。


既にだいぶ登ってきているため、長白の街並みがよく見える。だがまだ対岸は見えてこない。


更に行くと古ぼけた駐車場があるが、車道は左に折れて更に続いている。その一番奥にこれまた古ぼけた超・超・急勾配の階段があった。地図から霊光塔はこの真上あたりにあることは分かっていたので、思い切って登ってみることにした。


しかしながらこの階段がひたすら長いしひたすら急なのだ。うっかりこっちを選んでしまったのを後悔するくらいには苦行だった。試しに手元にあったペットボトルと比較してみたら、、、なんと段差のほうがペットボトルよりも高いという!それは疲れるわけだ…。


途中に踊り場があってもこの景色では全く休憩する気にもならずリフレッシュもできず…。


そしてようやく登り切ったと思ったらこの仕打ち。一体俺が何をしたっていうんだ、と叫びたくもなる。しかしながら段差が先ほどの半分くらいと常識的な範囲になっていたことだけが救いだ。そしてこの階段を登ると…



見よ、この絶景!!眼下には長白の街並みが広がり、遠くには恵山もクッキリと見ることができる。先の疲れが一気に吹き飛ぶ爽快感と達成感が一気に押し寄せる。


本来的には観日台、つまり太陽を観るところらしいが、気にしてはならない。人民の太陽がお創りになった街を観るところだ。そしてここからなら一眼で撮影してもさすがに大丈夫だろう、ということでカバンからカメラを取り出し思う存分望遠撮影を開始した。




ということで早速望遠撮影を開始。すると何といきなり列車を発見!人がいないのをいいことに小声で叫びながら何枚も連写した。1両の単行列車のようだが詳しいことはよく分からない。


列車の次はバスがやってきた。反対向きのため前面のようすが見えずどんな車両か分からないが、何となく左ハンドルの右側通行仕様のように見える。


高台に登って初めて見えた山の上にも、ぽつりぽつりと人家のようなものが見える。果たして定住者がいるのだろうか、彼らは一体どんな生活を営んでいるんだろうか、または人家でないとすると一体何の建物なんだろうか、などと思いを巡らす。


そして恵山の中心部である南の方面を観ると、2人の肖像画が掲げられた一際目立つ建物が目に入った。その下に書いてあるのは相変わらず何らかの標語のようで、平壌市内ならまだしも恵山の地図など当然ないため詳細については残念ながら全く分からない。


川沿編②でもちらっと出てきた巨大なモニュメントもここからだと様子がよく見える。その前は大きな広場になっているようだが、万寿台大記念碑のような立ち位置の施設なんだろうか。
更にそこからおそらく恵山いちの大幹線道路が伸びているように見受けられる。万寿台大記念碑も主席と将軍の目線の先には労働党創建記念碑が位置するよう設計されているというし、奥の突き当たりにある建物ももしかしたら重要な建物なのかも知れない。


山の中にもスローガン?が掲げられているのはある種の衝撃がある。手前は산림애호(山林愛護)、奥は산불조심(山火事に注意)。それだけではなく、意外に高い場所にも大規模な建物が建っているのも、地味ながら不思議なものである。


こちらの山火事注意は山が倒れてしまっている。が、火事に注意、でも意味は通じるのでOKなのだろうか。四字熟語ではなくなってしまっているが…。
また、記事を書いているときに気づいたが、下の端に漢字が書かれた建物があるようだ。朝鮮において漢字が廃止されて久しいが、建物自体はさほど古さを感じず、とても興味深い。




山の上のほうまで背の低い建物が連なっている。やはり身分の低い人たちはここに住まわされたりするのだろうか。


国境の様子もよく見える。幅は車道1車線ぶんくらいだろうか。兵士とも一般人ともとれる歩行者が数名橋を渡っている姿が見える。そもそも陸続きの国境というものが日本人にとって馴染みのないものであり、こういった風景を見ると若干の興奮すら覚えてしまう。
周囲を見ると、朝鮮側にはガラス張りで円形のとても気合の入ったゲートの奥に、伝統的な朝鮮風の立派な建造物がある。実際の入出国審査などは奥の建物で行われているだろうか。


手前にもこれはこれで立派なゲートがある。屋上には「中華人民共和国長白口岸」と掲げられている。ちなみに口岸とは中国語で国境を意味する。こちらも更に手前に一対の建物があるが中央は通路となっている感じがあるので、もしかすると入出国審査などはゲートのほうで行っているのかも知れない。しかし市内の貧相な建物たちに比べて国境の気合の入りっぷりは両国とも引けを取らないのではないか。


そして左を見れば眼下に長白の街並みが広々とあり、遠くには恵山の東側も望むことができる。


そして今度は3両編成の客車列車のようなものが見えるが、しばらく眺めていても動く気配もないため留置車だったのかもしれない。



大興奮の写真撮影を終え奥へ行くと、こちらが霊光塔。1988年に国の重要文物保護単位に指定されたという。百度百科によれば渤海の頃に建てられた仏塔ということなので、千年以上の歴史があるらしい。


その他にも南天門遺跡というのと兼ねているらしい。何やらいわれの多い場所のようだ。


そしてお決まりの望遠鏡。每人收费10元と書いてあり、見張りが2人もついている。こんなとこまで観光にやって来る人などそんなに多くないだろうに…。


ここにも何か書いてある。漢詩も書かれているが、落ちたらシャレにならないので一瞥してスルー。


先程の望遠鏡の隣にはこんなものまで用意されていた。撮影用チマチョゴリのレンタルだ。丹東では腐るほど見たが、まさかこんなところでも見るとは…。しかしこの距離では記念撮影などしても街並みは豆粒以下になってしまいそう…。ちなみにこちらは15元と大変リーズナブル。





奥へ続く歩道は駐車場へと続いています。


とても広い駐車場です。数十台は駐車できそう。一番奥はやはり展望台となっており、こちらからはやや東の方角を眺めることが可能。


帰りは車道を通って下山しました(といっても途中の写真はほとんどない)。



(犬肉編に続く)

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